<717>「あんまり私が軽いので」

 「そうですね・・・」

 簡単だの、難しいだの、を言ってしまうことは出来なかった。日常は、誰にとっても困難として映るのだろうか。実際に起こったのではなく、こんなことが起こってしまったら、という考えにどんどんと追い込まれてゆく。笑い話ではない。つまり、それだけ内側は確かだと、いう訳で、目に見える変化はなく、しかも現実と変わらないもの、なのだ。

 「そうですね・・・」

 具体的な歩みが、一歩が、何のさわりもない。しかし、こんなにも困難のないことで、笑っている、ということは、確かに困難だと知らせるあれこれがあったということ。そんなものは現実を変えないと言う。そこで私は、そんなものは現実と変わらないと言うはずだ。

 同じ瞬間が、気分によって可能になったり不可能になったり、そんなことはおかしいと言う。そんなことは普通だと言って、なるたけ軽くなる方法を探してみる。すると、私があんまりにも軽いので、とまどっている。