<731>「灰のあたたかい出合い」

 徐々に声を増やしてく。

「祝福しよう」

と、言葉は常にひとつだ。新しくなって、また、聞き惚れのなかへ、やたら戻っていく。

 めっけた。誰かが含んで、くちゃくちゃ、になったからには、激しい雨のなかでもかならず見つける。なんといっても、膨らんだ地面から甘さが香り立ち、ハラハラ、ハラハラしていても仕方がない。

「私は、この道を見ていたと思うんです。丁寧に歩くことを考えていたと思うんです」

今、この場に踊っているもの。帽子を落として、フラフラ、と拾いにいかないもので、特別な、灰色がかる出会いを果たした。何故だか私にはあたたかさだった。微笑みは、ここには必要ない、と思えるほど安心していた。

 今にして思えば、あなたがこぼした、そして、ただ見ている、ムキになって揺れると、淡々と、簡単に、滑っていってしまうこと。良い掛け声が、いつかの重さにならないように、誰かふと、呼ぶことをためらっていた、ので。