<734>「あなた方ただ掘るのだ」

 掘って掘って掘った先に何かを見つけようだなんて調子の良いことを考えてちゃいけない。何かを見つけるため、だなんて、途中で浮上して引き返してゆくつもりか? あなたがたただ掘るのだ。理由が欲しいなどの考えはほうっておく。

 一分の隙も漏れもなく過ごしてきて退屈し、隙間から差す光にフラフラと誘われて危険に突っ込むのならばナンセンスじゃないか。そうでなく、ただ掘る、とそこは隙間である。探すために掘っていたのじゃなく、次から次へすると紛れもない隙間、よそで見つけるまでもなく、という訳じゃないか。

 一体全体誰の何のためにそこへ隙間を、知らぬ知らぬ出来てしまうものは出来てしまうのだ。そこで覗く覗く何ひとつにっこりといきましょう、などなどでようやく、ほっと息をつくのかな、と思っているそばで掘る・・・。