<782>「悲しくないときだけ泣くことが出来た」

 充分に細くしておく。誰も閉じていない。目が合う気がするのでない。そこに間違いはないのだ。充分に細くしておかなければ良かった、と、後悔もせずに一応考えてみる。

「君は満開のまま回転しているのか?」

いや、いつも、激しい運動は一番下に隠されていて、どこから、何のために突き上げるのかも知らない。

「俺はお前を摑む。そうして次の瞬間に、無視して置いていく」

ことが出来る。ただ、一番熱くはない。俺はただの容器よりも熱くはなれないのだ。決して貧しくはない数の色を持ち、普段から一色としか考えられていないただの小さな箱は、悲しくないときだけ泣くことが出来た。声を聞いてくれて本当に嬉しいだろう。まだあいだからおそろしい歓声が漏れている。