<786>「不在のあとを」

 あくびをする。誰かがいない。空気を分ける。ここはここで、不在のあとを楽しんだ。

 けいきが落ちる。けいきを拾う。わざと塗りたくる。ここはここで、不在のあとを楽しんだ。

 指でしめす。方向は踊る。風が水気を求めて近づいてくる、と、ふれる。ふれて落とす。間違い探しのなかにいて、不在もそれもなんのその。

 初めて見た肩から、そのなだれこむべき場所を見極めて、緊張に大げさに溶け出しそうだ。

 ただの一度でのふるい、ふるわれ、ひたすら顔の上を交換してゆく。見えていいものも今は見えない。

 心変わりもまた違う場所。思い出したように熱くなる。触れている。触れていい。せめてもの遊びあなたと私と確かめた後で。

 いない、いない。不在もなんのその。ここにはここの、後には後の、静かな考えらしきものがあった。