<789>「あなたの言うことには名前がない」

 順番が逆だ。あちらこちらで物事が上手く転がっていって、それは私に、真っすぐ進んでゆく言葉が見えないからだ。上手く摑めないからだ。

  混乱に乗じて踊ってくれよ

 上手く踊れればいい。考えることもバラバラでいい。引っかかりをいちいち置いておくよ。絡まったことも名前も知らない。誰かが静かに触れたことを知る。

  あなたの言うことには名前がない・・・

 川に手を差し込む。持ち上げたそばから、関わりと呼べるものの全てが弾けていく。顔面から突っ込み、一気に吸い上げた。私は肌になっていた。極限まで似てくるどころではなかった。

 確かでないことは、そっと混じらせていたい。何度でも同じ場所に戻ってくる。激しい流れに呑み込まれることも、一切を拒否して静かな一本ミチを作ることも否定しない。ただ私には意味の分からぬ揺れと、それに伴う僅かな気持ち悪さが必要なだけだ。

 思うことを減らせ。語りが順番を見つける。ふとした瞬間に全てが上手く噛み合うよう、そのタイミングを逃しても心から笑っているとだけ。嫌いどころではない。浮かぶことが共通の夢である。まなざしを普通に呼べない。