<796>「落下、火」

 やがて、行為は転落する。

 窓を開け、ただ呆然と眺めていた。欠片を集めた中心に落ち、たちまち燃え出す。煙は避け難い名前を見せてユルユルと、あ、こちらまで上がってくる。顔を不安定な温かさで撫ぜるとき、既にその名は消えていた。かすかな悲鳴が残った。

 道行く人々が次々にひび割れた。私は燃えかすを知らない。黒こげのなかをひび割れつつゆく人々。その滑らかさ。

 確認はいつでも招待される。そしていつまでも燃えることがない。火には見えていない。確認の音色が見えていない。確認には音色がない。

 驚いて、遊びのなかへうずくまる。それらしい人々と共に。

  なにもあたたかくない

  なにもあたたかくない

 苦し紛れに、声が残った。へたをこきまきあがる。なににせよ次は欠片だ。欠片はあなただ。あなたは呆然と見る。火が見えていない・・・。