<803>「ホームランに触れる左足」

 この日の夕方、まずべらぼうな舌。べらぼうな運動にやたら温度が上がり、ほとんど身体と一緒に溶けている。

  順番ばかり作っていてもしょうがないじゃない

 私は流れつき、二日目にはおのずと夕方を舐める。剥がれて温度が見えている。暗くなると浮かれて眠った。暗くなると浮かれて眠った。

 近所から徐々に左足が増えている。左足は納得している。納得した上で熱湯を混ぜている。湯もみと、湯もみ、湯浴みだ。誰も上がらない。風呂は混ぜていく。団体が通る。いつもの調子に戻って整列を越えると、どこやらから震えた声が言う。

  あたためようあたためよう

 こちらあたためた試しがなくふざけた秒数で爆発すると、そこいらは途端にしん・・・となる。過激でいいな。歌劇はいかが? 私歌はそこそこで友達からも壊れた信号機と呼ばれるくらい。二塁ランナーは回る。回るそばから他のことを考えていて足取りが覚束ない。おい頼むからかけてくれよ、おハコかい? いつものエースナンバーさ。豪速球が背番号1の背中を掠める。あたしゃ怒るよ、あたしゃ怒るよ? それは魔球だ。リクエストは魔球を見失う。あっという間に夕方になり最後の歌になる。必死でかけると音が止まる。しめた、足は回転する次第に左足ばかりが増えているのとお客さんが家の前へ群がっていてどうにもこうにもしょうがない。おい誰か、スープパスタを。スープパスタはチャンスで打つ。スープパスタはピンチに強い。何も混ぜていない。それではロマンがない。ロマン歌謡は、あそう、私は歌劇にするわ。隠れているから基地でしょう。や、隠れてなくても基地でしょうが、二塁ランナーは勢いよく滑り込んだ。カラオケのボタンを押す。店員はうろたえる。坊っちゃん一緒に遊びましょ。冗談じゃないまだ夕方じゃないか。限られた時間のなかで構えを見つけると、そこにはゆっくりとくつろぐ太っ腹のおじさんがいた。どこからでもかかってきなさいさあいらっしゃい。インコースか、アウトコースか。目をつぶってめちゃくちゃに腕を振る。映画スターがそれに応える。今のはホームランですよ。