<881>「生まれたての入り口」

 あたしが、開閉扉。 あたしが、回転扉。

 ひとつの物音に いくつもの入口が用意されること。

 あるいは夏のススメ、夏の惑い。

 多少なりと、誘惑である、その空の下へ、私は畳を敷く(ヘチカンさんが茶を点てるように? いや、ヘチカンさんがただ面倒くさくなって横にごろんと転げているような次第で)。

 俺は浮き 浮き(余)のもの。

 からっかぜのなかで、ひとり座(ザ)す。

 そこをゆくボロボロの姿は、クーカイさんだ(クーカイさん! クーカイさん!)。

 あたしは おそらくどこまでも激しい風のなかで、静かな瞳と静かな唇(くちびる)を持つ、稀有な姿を、静かな愛(かな)しみでもってとらえる。もっと言えば、くわえる。

 音(おと)と世界に、あなたの指(ゆび)の、その一指しの大きいこと大きいこと! たそがれが微笑みになって何年になる?

 なまめかしい呼吸の最中(さいちゅー)に、ああ、激しくて仕方のないのは俺なのだ、と、生まれたての頃みたいなふざけ方をする・・・。