<903>「春の道、よその道」

 どこへ向けて風(かぜ)のよそへ吹くのか・・・。マ、新しく目の、目のなかへあれ、変わる姿。

 よそをゥ行(ゆ)く。よそをゥ行(ゆ)くひとりのたたずまいを、静かに見つめる。と、ふとゆくと、明らかにこぼしているものが、ある、と、すれば、それは問わずにいた、もの、溢れて、あァ、全てが溶けて、ひろがって、あなたが浮かべていたものへ、すゥっと乗って、そのことのなかで声、私(わたくし)のそばへ渦巻いていたのだと思う。

 なんの気なしに道のそばへ、私(わたし)がことと知るものをひろげ、人(ひと)はなにの色で私(わたし)を覗き込む? 整列して、決まり悪く朝になって、眺めて、またひとつ行方を告げて、誰彼なしに笑みを向けている・・・。

 鐘の余韻へ身(ミ)を任せて・・・。その姿形がわたしにとっての春をすっと寄せて。陽気のなかにただシンプルな音(おと)としてあるあなたが好きだ。わたしは見ていたい。ひとの指の先が告げるただからからと鳴るさわやかな絵の姿のなかにいるもの全てを見ていたい。

 ひしと立っている。それは、揺れないことではない。あなたの笑みの先、その真っすぐな線の先に、私もまた満面の笑みで到着出来るように、ひしと立っている。