<928>「言が、あなたのひたいに」

 ここはどこの言(こと)だ。言(こと)がからからとあらわれた。わたしの姿はいつになくかげろう的、ひとは祭り。祭りの揺れる。

 もの珍しい風が吹き、いまははや、声が散り散りになっている。

 破片を聞いた。姿勢に驚きはなく、ただ穴に、あなたの染みてゆく、ひたいに、ふざけて触れてゆく、ただのけはいだけで触れたかどうかは分からないでいる。

 前を差す、微笑み。前を差す、悲しみ。うちわのかげに全ての表情の秘密が隠れて、中空に時計を見つめる。どこからが自分の声か、分からなくなって、表情の、途中の停止を余儀なくされると、

 ふふっ

 とまたうたう。戸惑いのなかに小さな花を咲かせて、みだる、みだる、みだる・・・。

 予感のない別れに、またひとつ快活を置いてきてしまった。いや、置いてきてよかった。ただ雨のなかを過ぎた。ふたりは匂いを嗅いだ。

 きらびやかな意識のそとで身体(しんたい)はバネ、ひとの見えなくなったところで匂いを取り戻している。それはわずかのあいだ、ここだけの秘密になる。まろんで見えている。つかのま、なんのことか分からなかった。おそらく誰もがそうだろう。

 ひとはひたいを示す。誰の言(こと)が触れてもよいように。ひとは姿勢に疑問を持ち込まない。誰の言(こと)も直に触れないようにだ。わたしは新しい朝に無理やりあくびを持ち込んだ。