<996>「染まる音をきいて」

 ぶれる

 優雅な煙のなかに居(イ)る、

 煙を吸い込む、

 吸い込むのはわたし、、

 吸い込むのは記憶、

 わたしを指差して軽やかに笑う、、

 おだやかな場面の真んなかに、わたしがいる、

 そのときも、煙を吸っている?

 いいえ、分からない

 うたかたの日(ヒ)、

 粒や粒やらがよりくっきりし、じねん色(イロ)や、味も濃くなってゆくとき、、

 わたしはあたたかい

 ぽかぽかとし眠らないではいられない、、

 鳥の声が、わたしのなかで長くなる、

 ひとは軽やかに跳び、あけすけに笑む、、

 日々はその黄土色した土のなかへ、

 土のなかへ徐々に自身を染(そ)ましてゆく、、

 はたして、染(そ)みのおとを、ひとかけらの蟻が偶然にも聞いていて、ぶるっとひとつふるえたのだった、

 そんな素振(そぶ)りであたたかくなってわたしは眠ってしまった、

 いつかただの陽(ヒ)はじかに、わたしの指先に触れていた、

 やわらかい

 気持ちいい、

 おぼえず指を絡め、そのまま甘くとけてしまうはずになった、

 水がだんだんに内側で華やかな色(イロ)を持ち始めた・・・、