<1153>「緑色の男」

 緑色で、嘘の季節だ。

 緑色で、濃く、むせる、嘘の季節を好いている。

 男の服も、交わりも、姿勢も、全てが緑色で、途方に暮れていて、繰り返して、テクノが好きで、静かだ。

 人口の川が流れる先に、家があって、

 緑色の自転車に乗り、

 日々を全て身体に付けてしまって、

 黙して、黙して、座る。

 時折黄色く変態して、

 あなたを揺すぶる。

 笛、笛、素通り。

 来て、回り、座る。

 

 まっすぐに引いた線の、あるいはゼッケンの、白。

 ふたつの水車、ひとの秘密の下で回る。

 路地、それから緑。

 転倒、それから高揚、常緑広葉樹、淫ら、

 発す、発す、発す、

 吸う吸う、ほ。

 

 男の無遊行。

 香りと全身の服。

 とめどのない汗、汗、緑色の記号。

 

 撫でていく、撫でていく。

 あくまで道に計算を挟み、秘密を回し、湿潤な妄想に襲われたままで、

 緑色の男はゴールを切る。

 瞬間、日々が、本が、冷めない水が映り、着ているものが重くなる。

 さりとて裸は恥ずかしい。

 裸という尋常でない時間を持っていた。

 緑色の服は息を吸う。

 ぼくだけ湿潤をしている。

 

 ぼくだけ湿潤をしていて、

 話す声の遠のく。

 男はこの場でだけ言葉を下ろしていた。

 静かに、緑色と、象徴の両方んなって、

 華やぐ。

 片付けを始める。

 片付けを始めることと、また流れ出すことの両方。

 本当の季節と嘘の季節の両方。

 気持ちの抜けた顔と過集中の両方。

 瀬戸際と、あんのんの・・・

 

 それも同じ日とするために。

 男のまたがる、緑色の日と同じにするために。

 ゆく、ひらく。

 わずかに流れる・・・。