<1164>「現実の中の眠り」

 陽のない昼下がりに、

 応えていたんです。

 遠のき遠くの方へ、

 ひとがひとりいたんです。

 まだ自身の声を知らない、身体の不一致を知らない、ささやかな、招くような姿、、

 ふらり、ふらと揺れ、、

 お前さまのそばで綺麗に消え、

 跡のつかぬ、、

 

 招ぶとすぐに飛んできました。

 応えるとすぐに忘れてゆきました。

 長い、長い一日のなかに、

 かくも細く煙りゆるゆると浮かぶ浮かぶふっと、

 そのあいだに何を挟んだらよいのでしょう、

 ね、

 あたしだって仕草はします。

 けど、

 

 おぉ、お、お、存在しなさる。

 おれえにゃあんたがただの煙とは見えん、

 よおよお、がは、は、

 

 乱されまいて 乱されまいて

 騒ぎなさんな、ねえ、あなた

 どこへ鳴くんです、、

 頼んないでしょう、

 わたしはただ一隅に居ます、

 どこへ鳴くんです。

 

 冗談え 冗談え、

 どこへでも通ります。

 身体だって全くの艶で、へ、へ

 一度や二度じゃござんせん、え、

 ただ醒めてみればよいのでさ、

 ただ醒めてみれば、、

 どうでさ、どうでさ、

 どこへでも鳴りまさ

 

 大概のことでは言わないけれども、あなたがたがそうして現実を言うんですから、どこかへ散ってしまったのじゃないの、

 そりゃあ、あたしだって言葉はしますわ、

 時にはしなだれかかります。

 でもね、現実は1日しかないんですよ?

 あなたがたは眠っているだけなんです、

 止まずたゆまずむく、むく、むくと起き上がる日のなかに声を何としましょう、、

 どこへ向かって鳴くんです、

 あなたがた全体を賭けて、

 あなたがたの一切がどこへ向いて、

 わたしは一隅にかかります、

 そこで、誰彼構わずに膨らむのを見、

 揺るぎなさを見、

 ふと溶けて消えてく方角を見るんです、、