<1174>

 こいツァひとりでに現れ出でたような顔をしている。

 来歴が知れない。

 ほうり込まれたのだな。

 ほうり込まれたのだな。

 そうに違いないが、うんともヤとも言わない。

 誰だろう、誰だろう。

 水色の静かな服を着て、じっと時間のなかに経っている。

 軽やかだな。

 自転車の音がする。

 こんな目は初めて見た。

 とっくに逸らしてしまえば良いものを、訳も分からず、じっと、じっと、飽くこともなく眺める。

 お前さんはもっと長い時間を前提にしているような気がする。

 だってあなたが知れないもの、、

 こうしてひとつの時間のなかにいるとはとても思えないもの。

 柔らかな跳躍様の姿で去るとき、

 柔らかな瞳の仕草でそのままに去るとき、、

 どこへ向けて声をしたらいいか分からなかった。

 

 自然にほうり込まれることもあるものだな。

 お前さんのことはよくは知らないけれど。

 お前さんが日常のなかの隙間を窺っているとは思わないけれど。

 

 ああ気持ちが良い。

 巡り、巡り、巡って、

 いつもの場所、いつもの場所、

 よく声のする、よくよく声のする、

 ひらけた道、通りの涼しさ、

 ここはただの草の集まりだったんだ。

 

 ね、あなたはひとりでだったんだ。

 どこかから言葉をもらうかもしれない。

 不安がし、そのまま物事を留めておこうとする、

 しかし心配ない、

 これはまた同じ繰り返しのなかに入ってゆく、

 刻々と重なり増えてゆく、

 それで長い時間を追った目が、

 ほうり込まれた目が、、

 別の時間でひとり沈黙しているかもしらない。

 

 音に音が混ざり仕草が仕草を招び、大音声(おんじょう)の広場にこうして立っているとき、

 静かに、陶然として、あの隙間の風景を懐かしくおもおう、

 めまえが揺れている、

 どこへ向けたら良いか分からない。

 長い長い時間をかけて、、

 ひろがる道のなかにいて、

 ひとり、

 身も透き通る、、