<1190>「生きている人は点になる」

 面に、一日が、

 曖昧に映り、過ぎました。

 平素から、この行いが、

 全くただにのびるひとつの道を、

 分かりにくいものに変えています。

 

 ひとが沢山過ぎるには、

 あまりにもこの道は単純ではないでしょうか、

 少し足りなくはありませんか、

 ひょっとして、わたしが持っているイメージでは十分ではないのかもしれません、

 

 最初の点が、点として、

 途方もなく滲みはじめたときに、

 何かむずがゆく揺れだすのを意識しました、

 つまり、この点はいずれどこまでも届く、と漠然と感じる、と同時に、そんな尊大さ、同一視するという傲慢さに恥じらいを覚え始めるのです、

 

 時計は時計で、回っていました。

 眺めているときだけに、特別に動くものとして、

 聴いているときだけに、特別に音を立てるものとしての姿勢を崩さずに、

 

 紙きれは放り出されました、

 それは信頼のためでも、無関心のためでもなく、

 ちょっと無邪気に、探りを入れるべく、

 そうしてみる必要があると感じられたからです。

 男は普通の挨拶を寄越しました、

 あれ、このことは案外一日二日は残ってしまうかもしれないと僅かに考えたりもするのです、

 

 動揺は、こみにかしおの中でもっとも愉快で、

 もっとも緊張し、

 もっともこの場所を分からなくさせるものがあります、

 果たして、何かが通じると信じたのでしょうか、、

 花壇のなかに植わっているかたがたが、急にばらばらに散ずるように思えました、

 

 各々が、各々の家を目指しています、

 一体全体おのが家の外にいて、誰に弛緩してみせたらよいのでしょう、

 足音が、呼吸のリズムが、

 首を左右に巡らす動作が、

 適度な温度を保ったまま、

 秘密の穴にそそがれてゆくのです、

 待人は歓喜に震えるでしょう。

 

 今こうして各地に移動し、

 線を引っぱり、

 面を作り出したように見えても、

 生きている人はいつでも点になるのです、

 道はひとつでよかったのでした、

 点がまたひとりで揺れていてもよいのでした、

 あす名前が変わっても動揺は過去へ過去へと次々に流れてゆきます。

 任意の場所に、なんのてらいもなく、

 ためらいもなく、

 小さな印を置いて、

 みるみるうちに大きくなっているのでした、