<1240>「剥落、」

 呼吸に別の時間が流入してくるのを静かに見つめうち騒いでいるものと平静な眼のあいだに映るものをいかんとしょうか、どうしようか、

 姿形が濃い煙のなかに埋没しちゅう、

 どうならさればよいか、

 どう身体が流れていくとよいか、どうか、そうか、

 ただ垂れて背すじからぼうぼうとわきあがるもののなかで

 ひとつの線を描くようなあれは冷静の、いいや、全く無思想の、ひりひりとした指の一歩だった、

 指の一歩は軽やかな身振りをこのうえに出す、

 あれにまんまんと歓喜がたたえられてゆくこともひとりの指先にはなんら関係のないことだろうと、、

 一声(イッショウ)が体内に漏れる、、

 一声がたれてくる時間をかくらんしていた、、

 ぼうぼうと放るひとのこえがなんら音も立てずどこにも残らずに消えていくように思われた、

 ただ心地がした、、

 この皮膚に心地がし壁がおのずから少し身を剥がしているようでもある、、

 剥落は一声どころではない、

 ショウがただはてしのない印象を持って呼吸とは別の時間になだれこんでくるような気がした、、

 ぽっかりと空いた印象のなかにすみやかに移りそこで呆然としているような気がした、

 身体が剥がれていた、、

 あんまり静かに音がした、

 あんまりさわぎがしなかった、、

 

 まだ浮かんでいるもの、あれは、漏れるもの、漏(レ)るもの、身体のそばでひりひりとふるえ、落ちて、

 まだ曖昧な表情をその時間に掛けている、、

 時間にぶら下がり、 ぶら下がったものの交わす話は、

 ぼう、ぼうとしている、 ヒビキガイツノマニカハがれていて、、 目に新しい動きを見せ、ただ笑んでいる、、

 その姿のなかにじぃ・・・、

 、

 と、、ひとりではいりましょう、

 身体を、順に、順に、掛けていくようなことで、

 身体をカワシしてゆくようなところで、

 ひりきな線が剥がれたものの姿を被(カム)ってゆくところを見ましょう、

 曖昧な香りのなかに表情を置ク、

 たれも見ていない時間に表情を置ク、、

 表情を置ク、

 眼の光が徐々に内側にひろがり、、

 はら、はらとなにやら静かに落ち、立ち上がり、、

 流れていくよほら長い時間を持ったものの顔が、、

 誰の、どこの時間を見つめているのかちっとも分からない顔が、こうして、流れていくじゃないか、、

 あれはひとつ響くだろうね、

 ほら、音がした、、

 なんだか、もっともっと詰まって、そのあとで、剥がれてゆく時間を、ゆっくり見ていて、、

 どういう気持ちだろう、、

 どういう気持ちが、たれてくる呼気の糸に触れて、

 静かに音をサスノダロ・・・