<1253>「青い声の上を渡って来る人がいた」

 片側から片側へ声をかけた、、

 そうしたかったのだ、

 そうしたかったのだろうと思う、、

 長くなり火はちらちらと目覚めている、、

 目覚めている過去を取り巻いて、

 身体は順調に声を出し始めるのだ、

 

 揺れた、 残っていたひとの身振りが、

 残像は静かに張り合わせる、

 残像はさらさらと静かな青い火を立てている、、

 ぼくのなかで一体全体膨れてくるのだ、、

 このさみしい青い色は、

 切ない姿、形は、

 あまりにも柔らかく把持して、

 あたしの背中をのびやかな線となって走る、、

 走る記憶のなかのひと、、

 時日が振り向く、

 時日が私を携えている、、

 それはきっと声をかけている、 目をかけている、

 慌ただしい辿りの赤い線に瞬間に沸き立つ余裕を携えている、、

 

 あなたの諸相の中に一息流れ、、

 どこか隅の方で軽やかに高い音を立て、その響きがなんとなく続くこと、

 時日を跨いで続くこと、

 その音にどこかで続き、わたしがそっと現れても、

 わたしはそれを知らないということ、

 わたしがそれを知ったところでどう思うのも難しいということ、

 しかし遠く、 同じ時日を経過してしまった、

 あんまりおなじ香りがある、、

 あんまり嬉しい身振りがある、、

 戻ってきましたというひとりごとを置きたい、

 このなんていうものでもないひとりの通りに、

 たとえばもう過ぎてはいないあの雨の日のバスのなかへ今でももたれ込み、

 振動をともなったガラスへ身体をはりつけたままにしていることなど、、

 ただ何度も風にあらはれて私には違う顔に見えていたこと、、などを、

 ここにひとりごととして置いてみたい、

 ひとが華やかに吐く呼気のなかに紛れて、、

 

 新しい雑踏、

 かつてわたしがどこかへ声を置いていたの、

 その声を渡ってくる人がいた、、

 やっぱり小さく揺れながら、

 やっぱり声というものはここいらへんに残るな、と思いながら、、

 ちょっとぼうってしてしまった、、

 あんまりいてくれるから、

 あんまりちゃんと吹いていてくれているから、、

 それからちょっと眺めた、

 わたしもそのなかへちょっとお邪魔しようと思って、

 ちょっと眺めていた