<1261>「風が夜に立つ」

 夜を立っている。

 あなたがぬ、ぬ、ぬ、 と独話さる、、

 この隙間にほっと相槌を置いてよいものか、

 もう少しこのままで流されていようと思ったのに、

 風が夜に立っている、

 一言目が大きく響いていた、

 がらんどうのなかを全身で、動く、

 目をつぶっていた、、

 ある忙しない眠りに、 ぬという、ぬという、ぬという独話が溢れ、みだれる、、

 わたしは騒がしい眠りになる、

 なっている、

 独話は続く、

 

 その言葉のなかに敷かれて、 ひとりでポォとした、

 ひとりでただポォ、とした、

 ただその流れのなかの一粒にじっ、と出会うために黙々と来た、

 ああ、ああ、、

 私はどこかから偶然に運ばれて来ていた、

 ひとりの粒が長く残る、、

 騒がしさのなかにひとり凪いでいる、

 どこかに貼りついているのではない、

 どこかに場所を見つけて眠っているのでもない、、

 ただ総体として静かに浮かんでくるのだ、

 流れはあるようだ、

 

 そうして夜を過ごしていると、、

 ちっとも遠くではないところで、

 ひとたちの忙しなさが心持ちよくここまで続いてくるのだ、

 きっとあなたはそのようにしますね、

 静かに続いてきて、、

 軽やかな風のなかに ひとりの粒を少しずつ畳み込んで、

 続いていますから、

 そうして見ています、

 

 だんだら、だら、 ト、

 ひとのなかをゆき、

 小さくみあぐ、

 かなしいほどに綺麗な日に、

 あなた、独話しょう、

 そうして言葉のなかに敷かれて、、

 たった今から何十年も、、

 その巡りにおもいあたるたびに、

 ただポォとしますから、

 ああ、そう思うと、、

 たったひと粒なんですね、、

 私は普段持っているとも持っていないとも考えないものですから、

 全くそんなことは知らないで、、

 ひと粒のなかに、

 丁寧に畳み込んだ数々を受けて、、

 見事にゆききします、

 それはもう、 小さな一風景のなかに、

 そっと独話して、、

 身体が馴染んでゆくのを感じながら、、

 なのです