<1276>「ひとつの絵のなかに」

 何が伸びる(いったいいったいとなって)、

 それがそうっと手のなかにひろがりながら不思議な形をしていると言いたいんです、、

 またたくまにひろがり、

 指の形のなかにあまりに単調に、

 あまりに簡単にひそんでいると、

 格別に分厚いものがある訳ではないと、、

 そんなことを言っていたい、

 

 しかし、そんなことを言っていたところで、、

 なにか、伸びていくもの、なにか、伸びていくものを、

 今、これらの周辺におさめておく訳にはいかないのだから、

 忘れがたいもの、今も、

 ぱっとその時日を出る、、

 きれいに彫り込まれたその跡を、

 

 きれいに彫り込まれたその跡だけが、

 今日にひとつ残りました、

 今日にひとつ残りながら、、

 全身は静かに埋もれてゆくのです、

 そこに積もるのです、、

 堆積です、、

 こちらをさして歩くのです、

 あまりに見事な一日だったのではないかしら、

 動的な一枚絵に、

 そこかしこがまた今日で、陳列と、小さく埃が舞う、

 目指すものの、沈黙セイ、、

 ・・・、

 どのようにして(どんなにして)、

 身体を跳ねさせる、、

 数多ある絵のなかにまた跳び、戻る・・・

 

 そんなことは私にはよく分からないようだけれど、、

 ある一定の付き方、

 付着と、

 あんまり熱情からは遠いこと、

 歓びがはじめから内化する、、

 はじめのうちから内側に折れかかる、

 その全場面を一枚々々身体のなかにおろしていく、、

 私が、ひとつの時日に、ひとつのある見事さでもって彫られている、、

 それはあまり大きな音ではないので、劇的であるとは思われないまま、

 劇的を過ごしてしまった、、

 

 この時日が短い点となっている、

 重たく膨らんで来、

 私の腕に何となく絡まりながら一本の線を伸ばしてくる、、

 そのままで線は、 目線に、 目線という目線に出合い、、

 緊張したままで彫り込まれていく、

 みじかい呼吸を延々と立てているようで、

 状態が、なにであるか、、

 さぐりながら、、

 身体のなかでより密になってゆくことを、

 鑑賞というカンをなくしてゆくことを、、

 ただ圧倒的に見るだけである、、