<1879>「全く涼しい一点」

 次々そこに声が出てきて、、

 私は、あんまり遠くへ来たのも忘れて、

 静かにはしゃいでいる、

 あれ、なんで、そうだな、と、、

 ひとつの身体のなかに、

 多量な響きが埋まっている、、

 そのひとつが、当たり前に風に乗って流れた、、

 海の近くで、

 人はたくさんいるのに、、

 あまり声がしないと思った、、

 ただ当たり前に、遠くだけが見えていて、、

 あたしはその場所でしばらく、生きているのを忘れていた、、

 あたしはただの白い器になっていた、、

 

 構えて、

 だんだん土の中へ深く沈んでいく自分をイメイジした、、

 そこからまた足の裏で地表面を掴まえるところまで戻り、、

 そこに静謐な姿でいる、、

 あたしは、この夜だけが他から独立しているように感じてくる、、

 手と、

 木の匂いと、、

 涼しい鳴き声と、

 風とがあるだけで、、

 私は回転する、

 ここに生きて帰ってくるために、、

 私は回転するのじゃないか、

 他になにがつらなろうがつらならなかろうが、、

 私はここを静かな力で、、

 握る、、

 私は本当の一点だ、、

 そうして小さな風に揺らいで遥か遠方まで行くことの出来る、

 小さな一点だ、、

 身体よ、持ち上がれ、、

 軽くなれ、、

 それはどこまでもこの日の、

 この日の連なりを含んでいるものの姿となる、、

 

 あの人の目、

 そうだ、どこか、暗い夜から持ち込まれて、

 あの一点に据わる、、

 あの人は微動だにせず、

 土を、

 煙を、、

 風を吸ってきている、、

 それが私には分かるので、、

 ひとつこの喧騒が空白になるところまで入ろうとする、、

 ひとつこの大仰な揺れが全体から諸々の粒を受け、

 集まって、

 沈黙してしまう一点に、入ろうと思う、、

 ・・・

 身体は後を追った、、

 私は、ここに夜のあの時日を持ち込んで、、

 跳ねていた、

 楽しい、、

 どこにもはしゃぐ線が出てこないまま、、

 私は静かに笑んでいる、、まったく涼しい、涼しい、ここは・・・